2017年12月10日日曜日

“「無理しない」地域づくりの学校” を読んで再考する福祉

偶然にも本日発刊の“「無理しない」地域づくりの学校  「私」からはじまるコミュニティワーク” を拝読した感想と,そこから改めて「福祉」とは何かについて考えてみました.

福祉・介護・医療に関わる職種は,機械化される職業が増えていく中で比較的生き残っていく職業であると言われています.それは,福祉・介護・医療で取り組む対象者は複雑化・多様化しており,対象者の個別性にうまく対処する能力が必要となるため,まだまだ機械や人工知能で補うのは困難であると考えられています.
また,福祉・介護・医療に関わる職業は利用者(=お客)から感謝をされる仕事と銘打っていますが,実際には働いている人達自体は心身共に疲弊して離職者も多いのが現状で,生き残る職業でありながらも敬遠される職業となっているのではないかと思います.

この本の中でも自分の置かれたの福祉の現状に疑問を感じていた筆者たちの葛藤,それぞれのプラン通じて苦難を乗り越えていく過程や成長が綴られていました.



僕がこの学校を聴講したり,この本を読むことで学べたことは,地域への支援を考える上では個別に飛躍的にスキルアップしたりカリスマを育成するのではなく,他職種や地域に住んでいる人達自体も巻き込んで仲間を作るためのスキルやつながりを作ることだと感じました.
そうであるからこそ,このような実践は誰にでも行える可能性を持っているし,この学校に参加するのに消極的な人も福祉に対しての悲壮感を持った人でも変わっていくことができるのだと思いました.

そこで,この本の大きなテーマとなるものが「無理しない」と「私」です.
しかし,これはただ自分のしたいことだけをやるという単純なものではありません.
校長の竹端先生とも話をさせてもらいましたが,これらの実践を行うためには他者に自分のやりたいことを伝えたり,他者を巻き込むためのコミュニケーションやプレゼンテーションを行えるスキルが必要であり,この学校では今までのコミュニケーションスキルをより一段階高めるようなプロセスがあったと思います.
少し難しい言い方をすると,弁証法的思考で取り上げられる“らせん階段のような発展” が起こっていると思います.
らせん階段のような発展とは,田坂広志さんの著書『未来を予見する「5つの法則」』に書かれている言葉で,例えば“伝える”という目的のために,言語→文字→手紙→電話→メール といった具合に,以前と同じような方法が少し高度な発展を遂げながらも世界に現れてくるということです.
この学校で行われる自分の考えを可視化させるプロセスは,まさに自身のコミュニケーションスキルをらせん階段のような発展につなげているのだと思います.
詳しくは書籍を書かれていますが,この学校で課される「マイプラン」,「ロードマップ」,さらには参加者みんなから発表者へのプレゼントとなる「コメントシート」が,自分の想いを相手に伝えやすくツールとなっています.

また,僕個人としては「福祉」とは何かということがこの本の副題となっていると感じました.
そもそもの福祉とは何でしょうか?
福祉に関わる仕事をしている人でも,改めてこの言葉の意味を問われてすぐに明確な説明を行える人は少ないのではないかと思います.
goo辞書によると,福祉とは「公的な配慮・サービスによって社会の成員が等しく受けることのできる充足や安心」と定義されています.
正直日本語だと全然意味がわからないし,公的機関(サービス提供者)がサービスを受ける人に与えなければならないことであるように捉えられます.
そのために,「私」という存在を押し殺してでも福祉に携わる職業としての立場を演じる必要があり,そうであるからこそ現場の職員はこの福祉という言葉に対応するために「私」を抑え,神経をすり減らしているのではないかと思います.

この福祉という言葉,英語の語源を素にして考えるともっとわかりやすく捉えることができます.
福祉は英語で“welfare”と言われ,well+fareから作られた言葉です.
well=良く,上手に,うまく→健康で,幸福に
fare=旅行や旅,それに必要な料金や費用→何とかやっていく→暮らす
上記のような意味で解釈される言葉であるため,まとめると“健康で幸福に暮らす”という意味になります.
福祉に関わる人は社会の成員を充足させたり安心させたりすることに邁進し過ぎて,自分自身が健康で幸福に暮らすことを置き去りにしてしまっているような気がします.
そもそも自分が健康や幸福でもないのに,他者の健康や幸福を本気で想うことができるのか,またそれを継続させることができるのかを考え直す必要がありそうです.

もっと言うと,日本では働き方や生き方を本当に考え直さなければならない段階になっていると思います.
世界で考えると日本は生産力が低過ぎます.つまり,働く時間に対して生み出す利益が少ないということ.
その一人一人の生産力を高めるためには,効率の良い働き方が重要であると言われていますが,それだけでなく自発的に行動することが不可欠であると思います.
その行動を促すためには内発的動機,つまり「私」が楽しい・嬉しいからそれをするという快感情が伴うことが重要です.
この本でも「私」が「無理しない」地域づくりについて知ることができますが,今後の日本での働き方についてのヒントを学ぶこともできそうです.
ぜひ一読してみてください!

2017年12月1日金曜日

「リハビリテーションに関する達成動機尺度」の紹介と使用方法について

私は病院で作業療法士として働くようになり,3年目から大学院修士課程に進学しました.
大学院とはもちろん,科学や研究とは何たるかを学び,さらには自分自身もあるテーマについて研究を行い,論文を書くということを行っていくところです.
私は大学院に進学しようと思ったきっかけは,人の「やる気」ということに興味があったためでした.

大学院では達成動機をテーマに研究を行い,恩師である京極真先生の指導のもと,リハビリテーションにおいても達成動機を評価することのできる質問紙(Scale for Achievement Motive in Rehabilitation:SAMR)を開発しました.
今回はこのSAMRについて,質問紙と面接を用いた使用方法について紹介します!

恩師である京極真先生の趣味で作ってもらったお気に入りのロゴ
SAMRの使用マニュアルと面接法についての資料はこちらからダウンロードできます↓↓
SAMRマニュアル
SAMRの面接法

ほとんどのことは上記のマニュアルと面接法に詳細を記載しています.
大学のオープンキャンパスなどで参加してくださった高校生やその保護者の方々にもこのSAMRの評価を体験してもらうことがありますが,やる気が出ないことやなかなか行動が持続しないことって誰にでもあるので,障害の有無に関係なく結構共感してもらいやすいこととして受け入れられていると感じます.

SAMRの特徴としては,10項目に対してどれくらい自分に当てはまるかを自己評価してもらいます.
その合計得点によって自分の達成動機の程度がどれくらいかがわかります.また,自分自身が成長することを重視しているのか,達成するまでの過程や方法を重視しているのか,という傾向を把握することができ,その傾向に合わせて支援内容や声掛けを工夫していきます.
さらに,面接法を行うことで目標達成を行いにくくしている原因を探っていきます.
面接法では,①質問紙に回答する時にイメージしていた目標,②その目標を達成するために必要な自分の行動,③その目標を達成するために手伝って欲しい人と内容,について尋ねていきます.
①〜③のそれぞれについて,思い付かなかったり具体的でない場合に,それぞれについての支援が必要となる可能性が高いと思われます.
①に問題がある際には,まず本人が価値を感じられる目標を具体的に設定していく必要があり,その人の将来像を一緒に考えていってあげると良いでしょう.
②に問題がある際には,達成までの道のりを具体的に示すことや目標を常に意識できるようなポスターを作ったり,日々の成果を確認できるような工夫が必要となると思います.
③に問題がある際には,目標と現状を一度冷静に確認することや本人にとっての物的・人的環境がきちんと整っているかを評価することをお勧めします.

このSAMRは,ぜひともリハビリテーションの場面で担当の対象者さんに使ってもらいたいですし,自分自身や周りの人がやる気が出なくて困っている時などに使ってもらいたいと思います.

使用方法で不明な点などがあれば,気軽に連絡してくださいね!
連絡先: sanokichi09094@gmail.com

2017年8月20日日曜日

地域支援のための自主シンポジウムを開催!!

この度,私たちで立ち上げた『きびだんごの会』という勉強会の主催でシンポジウムを開催することとなりました!!
この『きびだんごの会』ですが,作業療法士や社会福祉協議会職員,医療ソーシャルワーカー,社会福祉士,保健師,ケアマネージャーといった地域支援に関わる職種のメンバーで構成された会です.

地域支援を行うためには様々な職種が連携しなければならないのは周知のことですが,果たして私たちはお互いの職種のことをきちんと理解しているでしょうか?
正直なところ,作業療法士である私はPT(理学療法士)さんと呼ばれることが多々ありますし,社会福祉士さんや医療ソーシャルワーカーさんがどんな仕事をしているか十分には知らない状況でした.そのため,他職種が私に期待すること,私が他職種に期待することがチグハグになってしまっていました.
『きびだんごの会』では,自分の職種がどんな理念や信条を持って,どんな仕事を行っているかをお互いにプレゼンし合い,さらに自分個人はどんなことに関心があってどんなことが得意かをアピールしていきました.
そうすることで,地域支援の中での困り事に対して誰に協力を求めれば良いか,お互いの得意なことに関して相談するきっかけとなっていきました.

その中で,まだまだ課題だらけの地域支援に対して同じような悩み事を抱えた方々のヒントになったり,多職種での集まりを通して繋がりを作るきっかけになればと思い,今回のシンポジウム開催の運びとなりました.


今回のシンポジウムでは,(1)訪問リハで関わる対象者の方に対して,新たな社会資源を作ることで地域への参加に繋げた作業療法士と社会福祉協議会による連携,(2)自分の住み慣れた地域で,自分の大切な想いを残された人に繋ぐためのQOD(死の質;いかに満足して死を迎えるか)に対する支援,(3)倉敷市にある様々な通いの場(サロン,カフェ,集いの場など)の役割を紹介し,基本情報や活動内容をガイドブックにまとめ上げた制作者の想いについて講演を行います.
その人らしく地域で生活するために,地域での活動・参加につなげる支援,地域で最期を迎えられるための支援,地域にある様々な社会資源について知ることで,私たちにできることを一緒に考え,取り組んでいける仲間を作りたいと思っています.

ちなみに,今回のシンポジウムのために作成した素敵なチラシですが,芸術科大学を卒業した後に作業療法士になったという熱意のあるパワフルウーマンに作ってもらいました.
せっかくなので,チラシ全面推しで広報していきたいと思います.

地域支援に関わる方で現状に悩みを持っていたり,不全感のある方にとってはたくさんの刺激をもらえる会になると思います!
ぜひぜひ奮ってご参加ください!!

2017年6月11日日曜日

多職種連携の強み

”多職種連携”やチームアプローチが叫ばれる昨今で,僕もすごく大切にしてきたつもりのキーワードです.
理屈や実践の中では,1+1を2以上のものにできるのが多職種連携の強みだよなぁと考えてきましたが,何かいまいちピンと来ない部分があるのも正直な感覚でした.


先日参加した無理しない地域づくりの学校では,社会福祉士の方や社会福祉協議会の方が多い中でも,職種を問わず現在の地域や仕事での関わりにおいて色々な心配事を抱えている人が集まっていました.
その中では,ある人がプレゼンする地域課題のテーマについて,その方に対するアドバイスや批判を行うのではなく,参加者みんなで考え合ってその課題に取り組んでいくというような学校でした.
そのため,時には一緒になって悩み,地域のことを調べることもあるし,一緒に新しい取り組みに参加したり,自分の持っている人脈を紹介することもあるとのことでした.

人と人とが集まっている地域では,ものすごい多様性にあふれていて,誰もが導き出せる唯一の正解というものがない.だからこそ,地域にあるその心配事に目を向けられている人が一緒になって考えていかないといけない.
校長先生のお言葉では,「あなたについて(about-ness)のアドバイス・批判・査定はいらない.あなたと共に(with-ness)考え合う私,でいてほしい.あなたと私が共に成功する解決策(成解)を作っていくしかない.」という関係性によって,心配事は大きくも小さくもなるとのことでした.
これは,地域に限ったことではなく,人と人とで構成させる人間関係あるいは社会を対象にした支援の全てに共通することだなと感じました.

最近,自分とは異なる職種の人や異なる個性の人と知り合う中で,自分には持ってなかったモノの見方や捉え方,発展のさせ方など,いわゆる感性に触れ合うことができているなと思います.そうすると,本当に多様に自分の考え方が広げられているなと感じます.
もちろんそこにある人間関係も自分とは全く違い,そこで繋がった人脈によってまた新たな感性に触れることができています.

本当に一人の力,一つの職種だけではできないことが多く,自分とは異なる他者や他職種の力が,自分にはない知識や発想,人脈を持っていて,自分では思いつかない様な方法を作り上げていける.またそこから派生して,第3・第4の方法を生み出していけることが1+1を2以上の力にできるということだと実感できました.

そういう根本的なことに気づき,多職種連携の原理が見えたような感覚になれました.
そうなんです,単純に一人ではできないなら他人の力を借りれば良いんです.あなたと私で一緒に考え,作り上げていけば良いんです!

2017年5月1日月曜日

学生との面談を通して見えてきたこと

現在,学生さん達は新学期を迎えており,私はサブチューターとしてもっぱら数名の学生さんと面談を行っています.面談の主な目的は,1)授業に関する学習状況(習慣)はどうか,2)大学生活はどうか,ということです.
大学での授業は義務教育のものとは違い,単純に時間を掛けて学習をやるかやらないかで成績に大きく関わってきます.最近はGPAという成績評価方式が導入されており,成績の良し悪しを大まかに判断されたりします.成績があまり揮わない学生はやはり教科書に向かう時間も少ない傾向にあります.


そうした面談から見えてきたことは,やる気がなくなっている状態は概ねいくつかの原因に分類できそうだという感覚です.また,その分類に応じた対応も色々と考えながら面談に活かしてみました.

まずは,そもそもの目標がなかったり,目標がはっきりとしない,または目標に価値を感じていないというパターン.
私の所属する学科はリハビリテーションにまつわる作業療法士を育成する学科であるため,もちろん学生のほとんどはその職種になるという進路が決まっているはずですが,この職業にもあまり価値を見出すことができていないという状態に陥っていることもあります.
価値を決めるのは”自分にとってどうか”ということが大前提としてあるため,コンコンと私自身にとっての価値を押し付けてもあまり意味がありません.
しかし,なぜこの学科を選んだのかという理由を尋ねると,少しでも人の役に立てるんじゃないか,自分の得意なことや好きなことが活かせそうなどのきっかけが思い出されてきます.原点に立ち返ると,当初抱いていた将来の職業への憧れや価値が浮かび上がってきます.
こうして価値の再認識を行えるような声掛けやコーチングが有効かなという印象があります.

次に,自分ではある程度目標を認識しているし,学習しないといけないことはわかっているけど行動が伴わないというパターン.学校では友だち同士で話をしたり遊んだり,家に帰ると疲れて寝てしまうといった,学習する時間が取れないという確固とした習慣が出来上がっています.
目標への価値を認識できていてもそれに対する行動へ移せないのは,目標を達成するために費やす時間が習慣化されていないためです.自分のやる気という不安定で気分に左右されるもの,根気という意志に神経を注ぐ必要があるものに頼っていると,精神的に疲れて次に行動へ移す際に余計に取り掛かりにくくさせます.
そのために,歯磨きや風呂に入るのと同じレベルで,日課にしてしまえば決心が必要ではなくなります.その新しい日課を作り出す際には,学生本人に何から始めるかを考えてもらうようにすると自分のペースで行えるし,自己決定という責任感が生まれるのかなと思います.

最後に,学習の仕方がわからないことや何からどう手をつければ良いかがわからずに,非効率な時間を過ごし,理解が進まないというパターン.
せっかく学習に掛ける時間を確保できていたとしても,ただ教科書を眺めるだけでは実感が得られにくく,文字という視覚情報だけに限定されるため記憶にも定着されにくい状態となります.せっかく勉強しても何の役に立つかわからないという感覚となり,勉強しても無駄だという事態に陥りかねません.
このような学生には,グループでの学習を勧めています.といってもみんなで集まってワイワイするわけではなく,膨大な学習内容をグループメンバーで振り分け,後に各自がしっかり学習した内容を発表し合うという方法です.この方法だとみんなに教えないといけないという責任感と教え方を工夫するという,様々な感覚情報やエピソードに基づいた記憶となります.
また,自分の心身状態や様々な病気などと関連する大学での授業内容は,日常と結びつくような場面や記憶の片隅にある言葉に気づく瞬間が多々あります.その度に必ず本で確認するなどの反復学習を行うことで,普段の生活で役立つという感覚と記憶に定着させるというプロセスをアドバイスしています.

学習するのにも手を付け始めの頃は,時間や労力を掛ける手間がずいぶんと必要かと思います.
そのため,学習することを習慣にするということと,学習に費やす時間の質を高めることをサポートできればと思っています.
そして,学んだことが役立つという良質な経験をたくさんしてもらいたいなと思うこの頃です.

2017年3月30日木曜日

達成について考える

達成とは,物事を最後までやり遂げること,目的を果たすことであると意味が紹介されています.
また,達成を英語では”achievement”と訳しますが,その語源を辿ると元々の意味は”a”(始まり)と”chief”(終わり,最高位)と”ment”(状態を表す接尾語)の組み合わせになります.つまり,”achievement”は始めから最後まで達することができた状態を表していると言えます.


ここで,この達成という言葉についてより深く掘り下げていきたいと思います.
始まりが何を意味しているか,いつを指しているのかというと,思い立っているまさに今この瞬間のことです.
もちろん過去の自分と現在の自分を比べることもあると思います.しかし,物事をやり遂げるということに焦点を当てるならば,行動を起こし自分の未来を変えられるのはこの瞬間からでしかありません.
また,やり遂げるという最後の到達地点は何を意味しているかというと,目標とする未来の自分です.
つまり,自分がこうありたいとイメージしている理想の状態にあたると思います.

当たり前だと思われることをあえて言いますが,望む状態があるということは今の自分はそこには至っていない状態にあるはずです.そして,望む状態は未来にあるということになります.
達成という言葉を整理すると,今この瞬間の自分の状態から自分が目標とする状態にまで変化していくことであると言えます.
ただし,志向や関心(=欲望)は自分の心身状態やきっかけによってその都度変化していくので,目標とする状態に近づいていくとその目標も修正や変更が図られていくはずです.
このあたりは価値について考えるという点とも同様であると思います.

これらのことから,目標とする状態に変化していくという達成を目指すのではあれば,今この瞬間の自分をどんどんとその目標に向けて変化させていく必要があります.
矛盾しているようですが,その行動と目標のバージョンアップを繰り返していくと終わりの状態に至ることができないかもしれないですね.
しかし,そうやって一人一人が自分を進化させていくということは,人類の歴史がその積み重ねの過程を表現しているようにも思えます.
だいぶ壮大な話になりましたが・・・

2017年3月27日月曜日

価値について考える

今回は価値について考えていきたいと思います.
価値の元々の意味は,『ある物事がどれくらい役に立つかという度合いやその値打ち』のことです.
しかし,価値を厳密に考えると,”自分にとっての”という自らの感性を出発点として必ず生まれています.そのため,自分にとって絶対的な価値を感じていても,他人が同じように価値を持っているとは言えません.
また,全ての価値は目的や関心,欲望,さらにはある契機(きっかけ)といったものによって生じてきます.


例えばですが,1つ100万円と値がついたダイヤモンドを高いと思うか安いと思うかは人によって異なり,その人の心身状態や関心によってもたらされます.
また,単純に食べ物の好みでいうと,今は焼肉が好きだと思っていても,焼肉を食べた後ではアイスクリームが好きだと思っているかもしれません.もっと自分の好みに合った料理に出会うと,それが好きと思うようになっているかもしれません.

このように,価値には自分にとってのという感覚を前提として,自分の心身状態や関心,あるきっかけによって,その都度変化していくものであると言えます.
少し難しい言い方だと,契機・志向相関的に価値が決まっていくと言えます.

また,人間関係のこじれる原因として,価値観の違いが挙げられると思います.
極端に考えると,誰かと同じ価値の感覚を持つということは,その人と全く同じ心身状態で,同じ生活や経験をしないといけないということになります.そんなこと現実的には不可能ですよね.
そのため,人間関係を良好に過ごしたいと思うのであれば,誰かと同じ価値観を持つことを目指すのではなく,価値観は元々人によって違うのだという前提に立って考えなければいけません.
その上で,人の価値観を尊重することやその基盤となっていることを理解すること,それと同じくらいに,自分の価値観の基盤となっていることを相手に理解してもらえるように努めることが重要です.

最後に,達成動機(目標達成するためのやる気)においての価値を考えたいと思います.
自ら行動することや頑張りたいと思えることには,潜在的にそのことに対して価値を持っているはずです.そして,その価値は契機・志向相関的に変化していくはずです.
そのため,今自分が目標にしていることは,本当に自分にとって価値があることなのかを度々振り返ることや軌道修正を図る必要があります.
または,努力が徒労にならないように,簡単に価値が変化してしまわないような目標設定を行うことが要になります.

そして,その目標は本当に自分が主役の人生を送るためのものになっているかという観点から,自分の価値判断に則って考えてみてください.
ある人のアドバイスを鵜呑みにして頑張るということは,その言葉に価値を置くのではなく,それを言う人自体に価値を置いているのかもしれません.
無意識的に誰かの価値を叶えようとするのではなく,自分にとっての価値を反映させられるようにしてくださいね.

2017年3月14日火曜日

自分が主役の人生を送る

人生って誰のものですか?
当たり前ですけど,自分の人生は自分自身のものですよね.
同じ様に,他人の人生はその人自身の人生です.
人生の主役は自分自身ですが,主役だからといって自分の好き勝手にすれば良い,自分が一番目立てば良いというわけではありません.
これは,単純に自己主張をしてください,自分らしく誇りのもてる人生を歩んでくださいみたいなことを言いたいわけでもありません.


こんな人生になったのはあいつのせいだ・・・
親や偉い人の言う事を聞いて,その通りにしてきたのに上手くいかなかった・・・

このように,辛い時や自暴自棄になっている時には,まるで自分の人生を誰かに委ねたかのような言い草になってしまうことがあります.

自分自身の人生を送るということは,自分で物事を決断し,その決断や行動に責任をもつということです.
誰かに決断を任せるわけではなく,誰かに責任を押しつけるわけにもいきません.
誰かのアドバイスに沿って動いたのは自分です.言われたことに従ったのも自分です.
どんなに重要な決断だとしても,最終的には自分で決めて,自分が行動しているので,必ず自分自身にふりかかってくる問題となります.

決断には必ず責任が伴います.
その責任を負ってしまうのは,時に恐ろしくなることもあるかもしれませんが,自分の人生を誰かに代わってもらうこともできません.

医療や福祉,介護などの分野においては,自分のこと(行動)は自分で決めるという意味の”自律”を重要視しています.
この自律についての考えは,終活にも反映されていると思います.
自分の人生の最後をどのように迎えるか,当たり前ですけど死んでしまってからは決められないので生前にしっかりと考え,準備をしておくということ.
つまり,できる限り自分の決断を踏まえた人生を送るということです.

自分には全くわからない,知る由もない事柄だからこそ,誰かに決めてもらいたくなる気持ちになることもあります.
だからこそ,様々な人からアドバイスをもらったり,たくさん情報を集めることをしてください.
どうせ責任は自分自身で負わなければならないのだから,後から後悔したり恨んだりしないように,自分で納得できるように決断してください.

2017年3月11日土曜日

満足による幸せと日々を生きるという関係

満足(satisfaction)とは言葉の通り,十分に満ち足りていること,望みが満たされて充足した状態のことです.

例えば,空腹が満たされて満足した.叶えたい目標が達成できて満足できた.
これらは自分のしたいこと(欲望)が満たされており,まさに幸せを感じられる状態と言えます.
反対に,満たされていないからこそ不自由を感じ,不平不満がたまって時には不幸せだと感じるかもしれません.

では,自分の現状に満足して感動に浸りながら暮らすことで,本当に幸せを手に入れられるのでしょうか?


現状に満足すること,今この瞬間を幸せに感じること,それはとても大切なことです.

ただ一つ,気をつけなければならないことは,私たちには”時間”があるということ.
この時間によって自分は日々老いていく,一歩ずつ人生の終わりに向かっている.
周りの誰にとってもこの時間は平等であるため,周りの人は日々進歩しているかもしれません.いつの間にか自分だけ取り残されているかもしれないという可能性は,念頭に置いておく必要があると思います.
今に満足し過ぎて,自分を変えることへの恐れが自分を立ち止まらせてしまい,どうしようもできない制約を生んでしまうことがあります.
あの時あぁしていれば・・・気づいた時にはもう手遅れだったということもあるということです.

不自由で満たされない感覚は,時に辛いものであるかもしれません.
でも,満たされていないからこそ,それを満たそうとする気持ちである”やる気”が湧いてくるとも言えます.
もっとこうしたい,こうであれば良いのにという将来の自分に対する期待が,満たされていない現状を変えようという動機になります.
その動機は,自分にとっての目標に向けられたものなら,それはれっきとした達成動機と言えます.

現状に満足できず,何とか現状を変えてみせると思っている人ほど,自分を変えるための努力をしています.
頑張っている人ほど,満足を感じられないから不幸であるというわけではありません.
幸せになるための条件の一つである,欲望を叶えるための能力を上げられる可能性があるからです.

叶えたい目標が達成できたら,また新しい目標を見つけましょう.
欲望は自分の身体状態やきっかけによって変わります.だからこそ,その欲望を叶えるための目標も新しくすれば良いのです.

だからこそ,満足や不満が良い悪いというわけではなく,限られた時間である人生においてはどちらも大切にして過ごしてください.

2017年3月8日水曜日

ガムシャラな頑張りはアブナイ

一生懸命に何かに打ち込むことは,自分自身を高めてくれるし,人生をとっても充実したものにしてくれるでしょう.
でも気をつけてください.何に対してもガムシャラに頑張ろうとする前にちょっと冷静になってください.

会社員の時にこんなことがありました...
なかなか業績がうまく上がらず,お客様からのクレームも多く聞かれる時期が続き,職員の疲労もピークになっていました.
職員全員はサボったりすることなく,とても真面目に仕事をしているのになかなか上手くいかない状態でした.
そんな中での会議で上司からのコメントは,
「みんな頑張っていると思いますが,成果が出ていないのでもっと頑張っていきましょう」
職員全員はうつむきながら「はい」と返事をする...

この状況は努力が足りないからなのか!?
すでにみんな頑張っているのに,これ以上頑張れというの!?
このままだとみんなに過労死してしまうよ.
僕は,単純にこう思いました.


結論を言うと,成果をだすためには頑張り方がとても大切です.
どうやったら努力に対する結果が得られやすいかを考え,どのように頑張れば良いのかの戦略を立てておくことが重要になります.

上手くいっていない時にはそれなりの原因が必ずあります.それを無視するといつまで経っても上手くいきません.
本当にただ努力が足りなかったのなら,それはもっと頑張りが必要なのかもしれません.
でも,仕事には責任感や給与が発生するために,まともな人ならすでに頑張っているはずです.
努力や運がなかったのなら継続的に頑張ればいいかもしれないけど,うまくいかない原因を突き詰めて,基本的には方法を変える必要があり,それはりっぱな戦略になります.

やはり頑張った分だけの成果が出せないと,何事にも希望が見出せないという感情がわいてきます.
これは,バーンアウト(=燃え尽き症候群)や学習性無力感(=何をやってもダメだという感覚)という,労働衛生にまつわる問題としてもよく取り上げられるようになっています.

上手くいかない時ほどちょっと冷静になって,周りの状況を整理して,目的に沿った頑張り方を考えるようにしてください.

2017年3月7日火曜日

幸せになるための条件

幸せだなぁって感じられる時ほど,なぜ自分が幸せなのかを深く考えることはあまりないですよね.
逆に不幸が舞い込んできた時ほど,何でこうなったんだと自分を顧みて悩んでしまうかもしれません.
誰もが幸せな時ほどその感覚に浸っていたいし,不幸せな時ほどすぐにそこから抜け出したいと切に思いますよね.つまり,不幸から抜け出すことは考えるけど,幸せを感じられるためのシンプルな条件には気づきにくいのです.


幸せや不幸せといった感情は自分の感覚でしかありません.
そのため,幸せを感じられるための条件として,(1)欲望の閾値(=満足する基準)を下げる,(2)欲望を叶えるための能力を上げる,(3)欲望の内容を変える,ということがあります.
(1)欲望の閾値を下げるとは,極論を言うと”生きてるだけでまるもうけ”の状態になるということです.自分に命があって,呼吸が行え,太陽や景色を見れるだけでも良かったと思えれば,いつでもどこでも何度でも幸せを感じられます.
このように,自分が叶えたい欲望よりももっと根本的な大事なことに気づき,それを優先させることで実行できます.

(2)欲望を叶えるための能力を上げるとは,今の自分よりももっと欲望を叶えられる可能性を広げるということです.この能力には,必ずしも自分自身の体を動かすことだけではなく,人とのコミュニケーションや物事を深く考える思考なども含めたあらゆる技術があります.
ここで大事なのは,がむしゃらに頑張るのではなく,欲望を叶えるためにはどんな技術を高めれば良いのかを見分けることです.

(3)欲望の内容を変えるとは,叶えたい欲望自体を変えてしまうということです.今の欲望を我慢するということではなく,自分はどのような欲望に生きる意味を見出すことができるのかを明らかにし,そこに対して一歩ずつ前進できる感覚を得るということです.
そのためには,自分はどんな時にどんなものに喜びや嬉しさ,生きがいなどの関心が向きやすいのかを意識することです.この関心の向きやすさは,自分の心身状態やきっかけによって変わってしまうので,幸せを感じたい時こそ改めて欲望の変更をする必要があります.

とにもかくにも幸せは自分の感覚だからこそ,自分で見つけるしかないんですけど,そのコツを掴んでおくことが重要ですよ.

この自由や幸せについての考えは,苫野一徳さんの著書「自由」はいかに可能か―社会構想のための哲学でとてもわかりやすく書かれています.
ぜひ読んでみてください.

2017年2月26日日曜日

達成動機って何だ!?

達成動機(achievement motive)とは,”目標をやり遂げたい(=達成したい)という意欲”のことを表しています.

ちょっと難しい言い方をしていますが,目標達成するためのやる気が達成動機というわけです.
実際に達成動機の生みの学問である心理学では,”達成動機はいわゆるやる気のことです”と紹介しています.
やる気や意欲には,何に対して気持ちを向けているかがハッキリとしていないという落とし穴があると述べましたが,達成動機はその弱点を克服する可能性があるものと言えます.


達成動機という言葉の始まりは,一生懸命頑張って成功できる人は,どんな特徴があるのだろうか?という素朴な疑問から始まり,人の性格の一種ではないかと考えられていました.
つまり,特定の人にだけもともと備わっている素質のようなものとされていたようです.

しかし,シンプルに考えると達成動機は特別なものではなく,誰にでも湧き上がってくる共通したものと言えます.
それは,人は誰でも何かしらの行動をとっていて,その行動には理由となる意欲が必ず存在しています.
その理由は,自分にとって価値のある目標である.
その目標は,今の自分から将来なりたい自分の状態にまでたどり着くことである.
こういった条件が整った時に,誰にとっても達成動機があると言えます.
そのため,僕が達成動機を説明する時には,”自分にとって価値のある目標をやり遂げようとする意欲”と言っています.

もちろん,そういう気持ちがあるだけで,その気持ちに行動が伴って目標を達成できるかどうかはその人次第になりますが...
達成動機についてとことん深く掘り下げ,できるだけわかりやすく今後も紹介していきたいと思います.

2017年2月25日土曜日

幸せって何だっけ、何だっけ・・・

幸せって何でしょうか?
順調に物事が進んでいる時には考えもしないのに,ふと不運なことや自分にとって都合の悪いことが続くと考えてしまいます.


幸せに感じる時というのは,要するに自由に感じられた時,欲望が満たされた時と言えます.
例えば,美味しい物を食べられた時,目指していた目標が努力によって実現できた時など.
これらは大小あっても,自分のしたいことが叶った時に感じるという点では共通しています.

ただし,どんなに願っても,努力してもどうしようもないこともあります.または,矛盾する欲望によって葛藤してしまうことが多々ありますよね.
美味しい物を食べたくても,高級な物ばかりは食べられないし,太ってしまうことや病気になって我慢しなければいけなくなることもあります.また,叶えたい目標があまりにも現実的ではなかったり,誰かにしてもらいたい事なんかだとどうしようもありません.
これらのことから,自分の幸せのための欲望や自由とは,何でもかんでも好きにして良いというわけではないと言えます.

幸せとは,いろいろな制約(=どうしようもないこと)が自分にはあり,その制約の中で,できる限り自分のしたいこと・欲望を叶えられるという感覚のことです.
つまり,自分にとっての様々な制約を理解し,どうしようもないことと,どうにかできることを見極めることが必要となってきます.
いつまでも不幸だと思ってしまう人は,意外とこのシンプルな構造を気づくことができず,どうしようもないことをどうにかしようと悩んでいるのかもしれません.

よく物事を”諦める”という言葉を使いますが,この言葉は仏教用語では”真理や真実を明らかにする”という意味があって,”物事を明らかにする”や”しっかりと見極める”ということを示しています.
自分が幸せになるに,まずはしっかりと自分自身やその状況を見つめ直して,”諦める”ということから始めてみるのも良いかもしれませんね.

2017年2月21日火曜日

やる気という落とし穴


何でもいいからとにかく頑張ろうと思う時には,よく”やる気を出すぞ”とか”意欲的に取り組もう”って思いますよね!?
ところが,やる気マンマンで気持ちは高まってるけど,実際の行動が伴わないという失敗の典型は,やる気という言葉に騙されているからです.このやる気や意欲という言葉の曖昧さに落とし穴があります.



やる気とは,何かをやろう(=頑張ろう)という気持ち.
意欲とは,何かをしよう(=頑張ろう)と思うこと.

やる気や意欲は大まかに言うとこのような意味になります.頑張ろうとすること自体はとても大切だし,人生を豊かなものにしてくれると思います.
しかし,これらの言葉の意味を考えると,何に対して向けられた頑張ろうという気持ちなのかが非常に曖昧で,自分のたどり着きたい未来が明確ではない状態となっています.

そのため,やる気に満ちた状態であったとしても,何をどのように頑張れば良いのかわからない.または,頑張ってもそれが良い方向に進めているのかどうかがわからないし,いつまで頑張れば良いのかもわからない.このような状態に陥ってしまう可能性があります.
人は何らかの成果が出ないと努力を継続させることはできません.頑張っても無駄だという諦めの気持ちや頑張ることに対する抵抗が生まれるといった,もっと恐い事態になりかねません.
これは”意欲”についても同じようなことが言えます.

やる気という言葉の落とし穴に引っ掛からないためには,頑張る気持ちの向かう先として目的や目標を設定することがとても大切になります.

2017年2月18日土曜日

どうやって自分を変えるのか??

今までの自分を少しでも変えたいけど,なかなか一歩前進することができない.

自分を変えられない理由として,⑴変わるための行動に不安や恐怖がある,⑵人の記憶はいい加減で忘れっぽいと紹介しました.
それらを乗り越えるためには,それなりの対策が重要になります.


”夢を叶えるゾウ”で有名なガネーシャ

⑴への対策として,行動を起こす際に生じる不安や恐怖に打ち勝つために,心のホメオスタシスを飛び越えることが必要になります.
人のもっとも根源的な動機は,好きという快感情と嫌いという不快感情です.やっかいなことに,人は不快感情の方が強く作用するという特徴があります.つまり,嫌なことから逃げる方がまさってしまうのです.
しかし,これをうまく利用して,「〜ができない自分は格好悪い」や「いつまでも馬鹿にされるのが嫌だ」という不快感情によって動ける方法を考えます.そして,本当に変わりたいのなら,後先考えずに思い立ったその瞬間に行動を起こすようにしてください.
そして,できない理由や変わることのできない理由ばかり考えるのではなく,できる理由や変わることのできた嬉しさをたくさん考えるようにしてください.

⑵への対策としては,いかに記憶を鮮明に保ち,忘れても思い出せるようにしておくかが重要なポイントとなります.
自分は記憶力が良いからとか,こんなに大切なことは忘れるはずがないと思っていても,胸の中で留めているだけでは数日も覚えておくことはできませんよ.自分を過信してはいけません.
忘れないようにするために最も大事なことは,アウトプット(=外部に向けた表現)することです.自分がどのようになりたいのか,何をすべきなのかをメモや張り紙,スマホに書き込むだけでも良いので,すぐに目に付く状態にしてください.さらに,その内容を誰かに語るようにもしてください.これらは単に外部に記憶を残しておくためだけでなく,書くという書字機能や話すという発話機能によって脳全体を活発に働かせることになります.
視覚記憶や聴覚記憶などどのような記憶の回路が得意なのかは人によって違いますが,まずは脳全体の機能を使って夢や目標を忘れない,思い出せる状況を作り出すことが必要です.

2017年2月17日金曜日

なぜ自分は変われないのか??

今の自分に満足できない! もっと素敵な自分になりたい!
誰もがそう思う瞬間があるかと思います.
でも,どんなに崇高な思想や夢や目標を抱いたとしても,変わらない人はいつまで経っても変われません.
それは,変わることのできないきちんとした理由があります.

台湾の台北駅にたたずむ現代美術”夢遊Daydream”
こんな経験はありませんか?
成功者の話を見聞きしたり,とても悔しい思いをして,どんな苦しいことに耐えてでも頑張ろうと決心する.
でも,実際に行動に移ろうとすると,いつも間にか変わらない,変えられない理由をたくさん探している.
そのうち,明日から頑張ろう.しっかりと準備をしてから始めようと考える.
そのまま寝て朝になると冷静になって,やっぱりやめておこう.チャンスを窺おう.
しばらくすると,いつの間にか忘れている...
こうしてまた変わらない自分がそこにいます.


なぜ,人はどんなに変わりたいと願い,頑張ろうと思っても変わることができないのか?
その理由は大きく2つあります.

1つ目は,変わるための行動には不安や恐怖が伴い,それがブレーキになってしまうことです.
人の体には,ホメオスタシスという体内環境を一定に保とうとする働きがあります.それによって体温や血圧が安定しているのですが,実は人の心にもホメオスタシスが働きます.この働きは,私たちが安心して穏やかに暮らすためにとても重要な役割を果たしています.つまり,重要な働きだからこそ優先されてしまうのです.

2つ目は,人の記憶はとてもいい加減で,恐ろしく忘れっぽいということです.
人は日々,本当に多くのことを記憶しようとしています.効率よく物事を覚えるために,情報を加工していきます.そのため,具体的に目標をイメージしていても,次第にそのイメージが歪められ,不明確になっていきます.
また,人が頭の中だけで記憶できる量には限界あります.”桜”や”ネコ”といった単語レベルでは6〜7つ,「〜に電話を掛ける」「部屋に〜を運ぶ」などの文章レベルでは3つ程度が記憶の限界になります.そのため,直近の用事がどんどん優先されてしまい,将来の目標は不明確となり,忘れ去られてしまうというわけです.

次回,”どうやって自分を変えるのか??”について綴りたいと思います.
お楽しみに!!